■ Concept

外部では彫りの深い陰影の路地空間が、内部ではデッキ床の隙間が内外において空間の余韻を伝えている。

■Outline

東京都世田谷区の閑静な住宅街に建つオーナー住戸と3戸の賃貸住戸からなるメゾネット形式の長屋です。不定形の敷地に合わせて配置したコの字 型のボリュームの中央に敷地内通路を引き込み、そこに閉じた表情で立ち 上がる5つの棟がその通路に対して互い違いに添えられて路地空間を形成 しています。

プライベートな空間が納まる垂直性のある連棟の隙間からは 、間口いっぱいの開口部を持つ玄関ポーチやテラスなどが見え隠れしています。視線はそれぞれにすれ違いながら路地と繋がり、深い懐が生み出す陰影とともに住む人々の雰囲気が路地にじわりと滲み出る、そのような「 余韻で繋がる連棟式住戸」の計画です。  



■Idea

オーナー住戸に付加する収益部分についてはマーケティングにより近隣で供給量の少ない2LDKを賃貸住戸タイプとして採用しました。カップルや小さな子供のいる家族、またはSOHOなどをターゲットとして、限られた敷地を有効に使いながら必要十分なプライバシーを確保しつつ、住戸内外において住人の寛容な関係を生み出す距離感をテーマとしています。

土間を持つ1階のLDKは内部空間の玄関の延長として見ることも、外の路地空間と延長としても見ることができます。また、デッキ床を通じて下階と空間的に連続する2階のオープンな洋室は床段差や十字に架けられた欄間が仕切りのきっかけを示唆しています。

空間の繋がり方と配置は注意深く決定され、それぞれの住戸は同一の構成要素ながら、バリエーションを生み出しています。空間の見立ての多様性は日々変化し続ける生活者の視点を支えて、外部の路地空間とともにこの建築に寛容的な全体性を与えます。



■Think

戸建てから長屋に建て替えることを決断されたお施主様の意向を汲みながら、同じ長屋で生活することになる人々との寛容な関係性を、配置や断面の計画に映し出すことに注力しました。法的条件である敷地内通路をひとつの手がかりに、それを単なる通路ではなく、路地空間に昇華させることがここに建つ建築を活かし、居住者同士の良好なコミュニティ形成に寄与すると考えました。

通路はもっとも狭い部分で幅員2mと絞られていますが、その直交方向に枝分かれする各住戸の引き込みスペースが接続され、ヒューマンスケールの塀が立ち、緑や飛び石が添えられて路地性を獲得しています。

引き込まれた各戸のポーチには全面開口の玄関が、その上には小さな専有のテラスが設けられ、このような各住戸ごとの「小さな環境」は閉じた箱の存在によって互い違いに配置され、平面的にも断面的にも路地という「より大きな環境」を成立させています。



■Gallery